大腿骨骨折の治療と合併症|腓骨神経麻痺に注意

「転倒後に動けない」ということで救急搬送される高齢者はまず
大腿骨骨折を疑います。

90%の人が転倒がきっかけでこれらの骨折になり、年間15万人以上の高齢者が受傷しています。

大腿骨骨折は高齢者に大変多い骨折であり、リハビリを頑張ったとしても元のALDまで回復できない可能性も高いです。

従って、高齢者にとって転倒は命とりと言えます

大腿骨(頸部・転子部)骨折の違い

大腿骨骨折には大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の2種類あります。

両方とも、股関節に近い骨の骨折ですが、わずかに場所が異なります。

頸部:関節包の内側のことを指し、内側骨折とも呼ばれる。
転子部:関節包の外側のことを指し、外側骨折とも呼ばれる。

股関節の可動域が広いのは、球体が骨盤にはまっている構造のおかげです。
球体に近い場所である頸部骨折の場合、疼痛も強く、骨癒合も難しいため、早期に手術が必要です。

転子部骨折の場合、球体よりやや離れているので、骨癒合はしやすい特徴があります。手術は必要になりますが、緊急でする必要はありません。

検査・診断方法

  • レントゲン
  • (CT)

言うまでもないですが、画像診断が確定診断になります。
大腿骨のレントゲン撮影でほとんどの症例で診断を確定することができます。
わずかな症例では、レントゲン上で見つからずCT撮影を必要とする場合もありますが、可能性としては極めて低いです。
ただし、疼痛や変形のため適切なポジショニングでレントゲン撮影ができない場合はCT検査の方が、患者の苦痛が低く良いかも知れません。

主な治療法

大腿骨頸部・転子部骨折ともに外科治療が第一選択となります。

人工骨頭置換術

頸部骨折の手術では、球体の部分の損傷になるため自分の骨を固定するには弱く、困難です。また、プレートなどで固定できたとしても血流が乏しくなり骨頭壊死に至るリスクがあります。
従って、人工骨頭という股関節の球体部分を人工物に入れ替える術式が一般的です。

(出典元:ナースフルより)

手術は全身麻酔で1~2時間程度となります。

観血的整復内固定術

転子部骨折の時の術式となります。

(出典元:ナースフルより)

転子部は骨頭から離れているため、骨癒合が良く血流も維持されやすいため、人工物の挿入ではんなくプレートやスクリューで自分の骨を正しい位置で固定する術式になります。

ただし、骨密度が低い場合はスクリューを挿入するときに骨が負けて骨折す可能性があるため固定できません。そのような場合は人工骨頭置換術を選択せざるを得ない場合もあります。

手術は全身麻酔で1~2時間です

保存治療

最近では80代でももともと歩行できていた患者の場合は手術をすることが多くなっていますが、どうしても手術ができない身体的な状態の場合は保存治療しか方法はありません。

保存治療の場合は、正しい位置で骨が癒合される可能性は極めて低く、特に頸部骨折の場合は骨癒合が難しい箇所であるため変形した状態で骨が固まってしまい自力歩行は不可能です。
骨が固定されるまでには2~3か月くらいかかるので、(高齢者はもっと時間がかかる)その間ベッド上での生活を余技なくされ、廃用症候群が進行し合併症を伴うことも少なくありません。

つまり、保存治療の方がADL・寿命は下がります。

人工骨頭置換術で起こりやすい合併症

  • 脱臼
    人工関節が正しい位置から外れます。
  • 深部静脈血栓、肺塞栓症
    手術のため抗凝固剤・血小板剤の内服を中止し、術前からベッドで過ごす時間が長いため血栓ができやすく、術後の初回離床時に肺へ血栓が飛び、肺塞栓症になることもあります。
  • 細菌感染
    人工関節は異物です。手術では十分な清潔管理のもと、行いますが免疫力の低下などで感染した場合、人工関節を抜去することもあります。
  • 人工材料のアレルギー反応
  • 人工股関節のゆるみ、破損、摩耗
  • 周辺の血管・骨・神経への損傷(術中に起こる)

脱臼予防に屈曲内旋位は禁忌

関節包を切除して、人工物を挿入しています。
3か月で関節包は再形成され、術後3か月が最も脱臼に注意が必要になります。
(その後も、禁止位が取らない方が良いです)

特に後方アプローチの場合、屈曲内旋位は禁忌

屈曲内旋と言っても、分かりにくいので具体的な座り方で説明をしましょう。
足を曲げた状態で内側へ向けなければ良いわけですので、あぐらや正座は問題ありません。

また、日常動作で注意したいのは

  • 床に座って靴下をはく
  • 足を組む
  • ステップ台に上る
  • 物をしゃがんで拾う

など。これらの動作は屈曲内旋位になる可能性があるので避けましょう

観血的整復内固定術で起こる合併症

  • 深部静脈血栓症、塞栓症
    上と同じ理由です。
  • 細菌感染
    どんな手術でも術後感染のリスクはあります。
  • 神経血管損傷
  • 偽関節
    骨折部が進展し、骨癒合ができなくなった状態を指します。
  • 大腿骨頭壊死
    転位が大きい場合は、骨を正しい位置へ固定することが難しく、骨頭への血流が乏しくなり壊死する可能性があります。

自分の骨を固定する術式ですので、人工骨頭とは違い脱臼のリスクはないですが、骨折の度合いによっては骨接合できない場合があるのでが怖いところです。

腓骨神経麻痺の予防は外旋内旋中間位

手術を受けるまでに最も注意が必要なことは腓骨神経麻痺の予防です。

【原因】
ギプスや牽引などで長時間、腓骨頭が長時間圧迫されること

【症状】

  • 下腿外側から足背部にかけての痺れや感覚異常
  • 下垂足(尖足)

大腿骨頸部・転子部骨折ではギプス固定や牽引はしないので外力で圧迫される可能性はありませんが、手術までの間、疼痛があり患者本人はどうしても患肢を外旋する傾向にあり、自力で足を動かそうとしません。その結果、長時間、外旋位となると自己の足の重みで腓骨頭が圧迫されて麻痺を生じます。

【予防】

ポジショニング!
外旋内旋中間位が維持できるよう枕などを挿入し、腓骨が圧迫しない体位を整えます。
(外旋内旋中間位=膝頭が天井を向くようにと患者に説明すると分かりやすいです!)

大腿骨骨折の治療後のリハビリ

【一般的なリハビリスケジュール】

①ベッドの端で足を下ろし、座れるか
②車椅子へ移る
③立つことができ、立位を保持できるか
④平行棒の間で歩行訓練
⑤歩行器を押しながらの歩行訓練
⑥(松葉杖を使って歩行訓練)
⑦T字杖を使って歩行訓練

のように進めます。

人工骨頭置換術の場合は徐々に荷重OKとなりますので、段階的にリハビリをします。
一方、観血的整復内固定術はたいてい術後1日目より荷重OKとなり、車椅子移乗に挑戦し、歩行訓練を開始するまでの期間も短いのが特徴です。

【余談】骨折が原因でなる寝たきりの恐怖

骨折が寝たきりの原因になるって有名ですよね。さらに、寝たきりになると様々な合併症のリスクが上がり、死亡率が高まることも明らかです。

寝たきりの恐怖について、「高齢者の長生きの秘訣は転ばないこと」を参照してください。

救急看護の実際

救急外来

疼痛が強いため、ポジショニングに注意が必要です。
まず、モニター装着、採血+点滴確保は言うまでもないです。

*採血?と思うかも知れませんが、大腿骨骨折では出血が多く貧血になる可能性がありますので必ず必要です。

衣類は可能であれば、体位変換をしながら脱衣の介助をしますが、疼痛が強く体位変換が難しい場合は本人に許可をもらいハサミで切ることもあります。
疼痛が強くて処置ができそうにない場合は、まずは鎮痛剤を投与しましょう。

レントゲン撮影で診断が決まり、すぐに手術に行くことはほぼないです。
救急病棟もしくは整形外科へ入院し、可能な限り早い日程で手術となります。

救急病棟

【手術前】

  • 腓骨神経麻痺予防(ポジショニング)
  • 疼痛管理
  • 血栓予防
  • 貧血の有無

の確認やケアに努めます。

【手術後】

  • 疼痛管理
  • 合併症予防
  • 離床介助(リハビリ)

が大切です。

疼痛は術後が最も強く、日数の経過とともに自然と軽減していきます。
人工骨頭置換術の場合は脱臼しやすい体位については患者へ必ず説明しましょう!

車椅子に乗車することができれば尿道カテーテルを抜去して大丈夫です。
意外と、尿カテを抜いた後は自分でトイレに行かないといけないと思いリハビリが進みやすかったりします!

回復期に入ればリハビリ専門病院などへ転院しますので転院準備を忘れずに。

 

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