クモ膜下出血の原因と治療|合併症予防が予後を決める

脳疾患の中でも救急搬送される頻度が高いのがクモ膜下出血です。

突然の発症で高齢者に限らないという特徴があります。

芸能界でも大人気歌手の星野源さんや時の人になりました小室哲哉の奥様のKEIOKOさんなど、多数いらっしゃいますが、後遺症の程度は様々です。

クモ膜下出血の全体像が分かるよう説明していきます。

クモ膜下出血について

脳はデリケートな組織のため軟膜・クモ膜・硬膜と3層構造で守られています。その中のクモ膜の下には、脳が活動するために必要な酸素と栄養を供給する椎骨動脈が走っています。
その動脈にこぶができ、そのこぶがなんらかの理由で破れ血液がクモ膜と脳の表面の隙間に漏れ、頭蓋内圧を上昇させます。

クモ膜下出血を発症すると40~50%は死亡、一命を取り留めたとしても約半数の人に後遺症が残ると言われています。

以下のような原因疾患を有する人は出血をさせないよう、予防することが最善の方法です。

クモ膜下出血の原因となる疾患や病態

①脳動脈瘤

クモ膜下出血の約80%は脳動脈瘤の破裂によるものです。
脳の動脈がこぶ状のようになっており、運動、努責、興奮状態などによって脳の血圧が急激に上昇すると、こぶ状の薄くなっている血管壁が破れ出血を招きます。
動脈はクモ膜と脳の表面の間を走っているので出血がわずかでもクモ膜下腔全体に及び、頭蓋内圧亢進症や脳ヘルニアを合併する恐れがあります。

②脳動静脈奇形

若年性のクモ膜下出血の原因に多いです。
脳の動脈と静脈がシャントを作っており、静脈壁は動脈に比べ脆弱なため大きな圧がかかってしまうと簡単に破れ出血をきたします。
奇形の時は無症状のことが多いので実は脳動脈奇形があったとしても検査を受ける機会はなく気づきません。
突然、クモ膜下出血を発症して脳動静脈奇形に気づくというケースが大半です。

③外傷

交通事故や転倒転落により頭を強く打った時に、脳と硬膜を結ぶ静脈が切れて細い血管からクモ膜下腔へ出血することがあります。

これは若い世代~高齢者まで全ての人に可能性がありますが、特に高齢者で抗凝固薬など出血リスクが高い人は発症しやすいです。

クモ膜下出血の症状は出血部位により異なる

出血を起こした部位によって症状が異なります。

前交通動脈 嗅覚障害、記憶障害、人格変化、一側または両側下肢の麻痺
内頸動脈 片麻痺、失語、運動神経麻痺、視力・視野障害
中大脳動脈 片麻痺、失語
椎骨動脈 動眼神経・外転神経・滑車神経・三叉神経障害・下部脳幹神経障害

どの動脈を損傷するかによって症状は様々です。特に椎骨動脈の場合、脳神経が多数走っていますので、脳神経と関連して症状を確認すると分かりやすいでしょう。

検査と診断

頭部CT:第一選択です。ただし、出血が少量の場合は診断がつかないこともあります。

頭部MRI・MRA:CT検査で分からない少量の出血も特定できます。

腰椎穿刺:髄液に血液が混入しており場合は急性期、キサントクロミーという漿液性の髄液を認めた場合は陳旧性にクモ膜下出血を起こしたという診断になります。ただし、頭蓋内圧亢進症を認めている場合は禁忌です。

脳血管造影:透視しながらカテーテルを進め奇形や瘤の位置や大きさを確認します。

クモ膜下出血の3種類の治療法

クモ膜下出血の予後は再出血・脳血管攣縮・脳ヘルニアの3点で決まります。
この3点を予防するために有効な治療法として、開頭クリッピングという手術、カテーテル治療、薬物療法の3種類あります。

開頭クリッピング術

出血後24時間以内は再出血の可能性があるので安静保持を中心とし、可能であれば48時間以内、遅くとも72時間以内出血した血管をクリップで止め、血種ができている場合は除去する開頭術を施行します。

未治療で発症から1週間経過した場合は、脳血管攣縮の時期と重なり、出血リスクが高くなるので、血管攣縮の可能性が少なくなる14日を経過してからの手術となる。

カテーテル治療(血管内治療)

大腿動脈からカテーテルを挿入し、X線による透視の下、出血部位までカテーテルを進めていきます。目的地である動脈瘤内にプラチナ製のコイルを詰めて閉塞するコイル塞栓術(脳動脈瘤コイリング術)や血管攣縮に対する血管拡張薬を注入する治療法です。
開頭手術と比較すると低侵襲で患者のADLに貢献する治療です。

保存治療(血圧管理)

血圧が上昇すると再出血のリスクも頭蓋内圧亢進症のリスクも高まります。
ベッドアップし、頭蓋内圧を亢進させない体位や血圧を低めの維持を保つよう薬剤でコントロールします。

脳出血慢性期の7~15%の割合で痙攣発作を合併する恐れがあり脳疾患の既往で起こる痙攣発作のことを症候性てんかんと言います。
痙攣発作は大脳皮質に出血があるほど発症しやすく、その割合は15~23%と高くなります。また、脳出血の好発部位である「被殻出血」や「視床出血」などの脳出血は痙攣発作の合併を引き起こしやすいとされていますが、抗てんかん薬の予防的使用は推奨されていません。
しかし、脳出血発症後2週間以上たってからの痙攣発作が起きた場合は、痙攣発作が再発しやすいと考えられ抗てんかん薬の投与が行われます。

原疾患と併用し合併症予防も重要

クモ膜下出血では脳だけでなく全身に合併症を引き起こす可能性があり、合併症を発症すると予後不良になる恐れもあるのでクモ膜下出血の治療と併用し合併症予防も重要です。

再出血

脳動脈瘤破裂が原因でクモ膜下出血を起こした場合、20%の割合で再出血を認めます。特に発症後、24時間以内が再出血のリスクが高く再出血を起こすと予後不良になる可能性が高いです。

外傷性のクモ膜下出血では再出血のリスクは低いです。まれに出血が続いたとしても血の凝固が遅いなどが原因で死に至るほどの出血をすることはほぼありません。経時的に出血部位が吸収されていくことがほとんどです。

脳血管攣縮

脳血管はダメージを負うと、脳血管攣縮を合併する可能性がありますので要注意です。脳血管攣縮とは、脳の動脈が縮んで一時的に細くなり血流が乏しくなることを言います。クモ膜下出血発症後、4~14日が攣縮の可能性が高くスパズム期と言い、脳梗塞になる可能性があります。

一般的にクモ膜下出血の原因で1番多い、脳動脈瘤はウィリス動脈輪の近くで形成されることがほとんどです。
脳への血流が必ずこのウィリス動脈輪を通過し、側副血行路がないため脳血管攣縮により脳梗塞を発症した場合は重症になりやすいと言われています。

肺水腫・タコつぼ型心筋症

発症によるストレスや血圧の上昇に伴う心負荷INOUTバランスの変調により肺水腫やタコつぼ型心筋症を招く可能性があります。

早期から血圧管理はされ心負荷を避けるために酸素投与もしているため肺水腫の予防介入はできていますが、もともと心機能・腎機能が低下している患者は要注意です。

尿崩症

脳浮腫が強くなり、脳圧が高くなると視床下部や脳下垂体の機能が悪くなり、下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンが減少し、尿量が急激に増加します。

生常圧水頭症

急性期では見られません。慢性期に入ってから合併する可能性がありますので救急看護師には直接関係ない合併症です。

救急看護の実際

救急外来

脳梗塞脳出血とほぼ一緒です。
バイタルサイン、意識レベルの確認、ルート確保の上、すぐにCT検査へ出棟します。

CTでクモ膜下出血と診断されたら血圧管理や疼痛コントロールを行いながら、手術や血管治療へ行く可能性があるので準備をしましょう。外科的治療を行った場合は、ICUや脳外科病棟へ入院となるでしょう。

救急部ICU

外科治療後もしくは、全身状態が不安定で外科治療ができず内科治療となってしまった患者が入院適応になると思います。

いずれにせよ、上記で述べた通り、再出血・脳血管攣縮・頭蓋内圧亢進症の3点に注意した管理が必要です。

ICUという特殊な環境の上に脳疾患ということでせん妄を発症する可能性も高いです。せん妄となり攻撃的になると安静が保てず血圧が急上昇することやドレーンや挿管チューブなどを自己抜去する恐れもあるので安全第一でケアが必要です。

救急病棟

外傷による軽度のクモ膜下出血の患者が多いと思います。
上で述べた通り、再出血のリスクは低いので急性期は安静保持と血圧管理を行い、安定後は離床援助をすることになります。

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