頭蓋内圧亢進症と脳ヘルニアは致命傷になり得る

脳疾患の合併症として最も危険なもの
頭蓋内圧亢進症・脳ヘルニアです。

脳外科、ICU、救急部はよく耳にする病態ですが、いったい頭蓋内圧亢進症や脳ヘルニアとはどういう症状でなぜ危険なのか、説明していきます。

頭蓋内圧亢進症とは

まず初めに脳の構造から再確認します。

脳は重要組織のため軟膜・クモ膜・硬膜の3層構造になっており1番外側は骨で覆われています。クモ膜の下にあるクモ膜下腔という場所は脳脊髄液で満たされており、言わば脳は浮かんでいる状態です。

脳脊髄液は常に循環し、一定に保たれています。1日3~4回入れ替わり、脳脊髄液の総量は約150ml、脊柱管内には約20~30mlあります。

成人の正常な頭蓋内圧は120~180㎜H₂O
頭蓋内圧が200㎜Hgを越えると頭蓋内圧亢進症状が出現します。

頭蓋内圧亢進症を招く原因疾患

脳出血、頭部外傷、脳腫瘍、髄膜炎、水頭症、神経性中毒など
基本的にどんな脳疾患でも頭蓋内圧亢進のリスクはあります

頭蓋内圧亢進症の症状

  1. 頭痛
  2. 嘔吐
  3. うっ血乳頭

頭蓋内圧亢進症状の3徴候と言われ慢性期に認めることが多いです。

なぜ、この3つの症状が起こるかというと

頭痛は硬膜や脳血管に存在する痛覚が圧迫されたり引っ張られることで生じます。
嘔吐は延髄の嘔吐中枢が刺激されて起こります。
うっ血乳頭は網膜中心静脈が圧迫され充血し、進行すると視力低下や視野障害を認めます。

急性期の場合は3徴候に限らず、
意識障害、異常呼吸、血圧上昇、徐脈、瞳孔異常なども出現しやすいです。

頭蓋内圧が亢進すると、ホメオスタシスを維持しようと身体は働き、代償制反応として脳血液量を増加させよう血圧上昇、徐脈になります。これを、クッシング現象と言い、3徴候と同じく重要な症状です。

頭蓋内圧亢進症予防のための看護

脳疾患、頭部外傷では頭蓋内圧亢進症状を予防することが患者のADLに関わりますので極めて重要です。
そのため急性期の脳疾患の場合は血圧管理が重要です
看護師ができる血圧管理とは頭部挙上&安静保持に限ります。

頭蓋内圧亢進症は脳出血を伴う病態のときに発症しやすく、血圧を低値でコントロールする、つまり血流を少なめに維持することで脳出血のリスクを減少させ頭蓋内圧亢進症を予防できます。
原始的なやり方ですが、ヘッドアップして脳への血液循環を抑えるとともに体動を制限し血圧の変化を最小限にすることが看護の役割として大きいです。

脳ヘルニアとは

ヘルニアとはそもぞも臓器が本来あるべき場所から逸脱することを言います。

脳は3層の膜と骨に覆われており完全密室の臓器です。
頭蓋内圧が亢進すると逃げ場を求めて本来あるべき場所から移動し、脳の中の構造が乱れます。

これを脳ヘルニアと呼びます。

脳ヘルニアは総称で、発症部位によってヘルニアの名前は異なります。

脳ヘルニアが起こりやすい部位と名前

頭蓋骨内は小脳テントという硬膜で仕切られており、小脳テントの上に左右の大脳半球がテントの下(後頭蓋窩)に小脳が位置しています。大脳から脊髄に繋がる脳幹は、テント切痕と呼ばれる穴を通っています。

図を見てもらうと分かる通り脳幹に近い部分のヘルニアは致命傷になりやすいです(青く塗られた箇所)。

中心性テント切痕ヘルニア

小脳テント上病変により脳幹が垂直方向に移動し、障害をきたします。
意識障害、異常呼吸、縮瞳、除脳硬直などが多い症状です。

下行性テントテント切痕ヘルニア

小脳テント上の病変により,側頭葉の内側に位置する鈎がテント切痕に移動して脳幹を障害します。
主な症状は動眼神経麻痺による瞳孔不同、片麻痺、意識障害、除脳硬直などです。

上行性テント切痕ヘルニア

小脳テント下病変により小脳の前部がテント切痕に移動し、脳幹を圧迫します。主な症状は下行性切痕ヘルニアに類似します。

小脳扁桃ヘルニア

小脳テント下病変により小脳扁桃が大後頭孔に移動し、脳幹(特に延髄)を圧迫し障害を起こします。主な症状は異常呼吸、項部硬直などです。

大脳鈎下ヘルニア(帯状回ヘルニア)

小脳テント上病変により,前頭葉から頭頂葉の内側に存在する帯状回という部分で起こるヘルニアです。中でも、特に前頭葉部分が正中方向へ移動し、左右の大脳半球を分けている大脳鎌という硬膜を越えてヘルニアを起こします。
前頭葉部で起こるヘルニアなので重篤な症状を認めることはほばないです。

外ヘルニア

小脳テント上病変により、前頭葉底面が前頭葉と側頭葉の間にある蝶形骨隆起を越え、側頭葉が存在する中頭蓋窩に移動します。
大脳鈎下ヘルニアと同様、前頭葉や側頭葉で起こるため脳幹から離れており、重篤な症状を認めることは少ないでしょう。

致命傷になり得る脳ヘルニアの種類

これまでの説明から分かる通り脳幹に近い部分でヘルニアを生じてしまうと生命の危機が訪れます。

上行性・中心性・下行性テント切痕ヘルニアと小脳扁桃ヘルニアです。

ヘルニアにより脳幹が損傷されると、血圧低下、自発呼吸の停止、対光反射の消失、両側瞳孔散大という死の徴候と言われるもの認め、これらの症状はで非可逆的です。
つまり、なすすべなく死に至ります。

救急看護の実際

救急外来

脳ヘルニアの原因である脳出血、脳腫瘍、頭蓋骨骨折などの脳疾患や外傷により救急外来に搬送されることは多々あります。

重症例では搬送時にすでに頭蓋内圧亢進症・脳ヘルニアを合併している場合もあります。

勘違いしてほしくないのは頭蓋内圧亢進症や脳ヘルニアが病名なのではなく、必ず脳出血などの原疾患があります。あくまでも合併症です。

救急外来での初期治療は原疾患が優先です。
原疾患で頻度の高い脳出血クモ膜下出血脳梗塞の知識が必要です。

救急病棟

脳疾患の患者は頭蓋内圧亢進症の予防、早期発見に努める必要があります。

上記で述べた3徴候を見逃さないうよう意識レベル、バイタルサイン、瞳孔所見の確認は必須です。

予防のためには血圧コントロールを欠かせず、頭部挙上により頭蓋内圧を下げることと安静に限ります。

急性期には3、6、12時間後と頭部CTでフォローし出血拡大の有無を判断すると思います。

抗凝固薬を内服している患者は出血リスクが高いので要注意です。
必ずCT撮影後は、出血部位や拡大の有無を確認しましょう。

救急部ICU

脳ヘルニアを合併している患者が入院することも少なくありません。
ICU管理が必要なレベルの脳出血の状態だと、痙攣の可能性もあるので痙攣時の初期対応も心得ておく必要があります。

脳幹に近い箇所の場合は、上記で述べた通り生命維持が困難となり死に至る可能性があります。
生前の本人の意思や家族の意向に沿った終末期治療を可能な限り行いますが、同時に家族は急な出来事で受容できていないことが多いので家族ケアも必要です。

救急病棟の看護でも述べた通り、3徴候を見逃さないことは言うまでもなく、意識レベルや瞳孔所見の観察で出血時の早期発見に努めましょう。

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