致死的不整脈とは
心臓は電気信号によってコントールされ成人なら1分間に60~80回心臓が正しく動き、全身へ血液を送り出しています。電気信号が何らかの原因で正常から逸脱し、急激に速くなる頻脈・遅くなる徐脈になり、意識消失からの突然死を招く危険がある不整脈のことを致死的不整脈と呼んでいます。
致死的不整脈の中でも頻脈性が2種類、徐脈性が2種類あり、処置が遅れた場合、死に至る可能性が高い緊急かつ重篤な不整脈です。
心臓の電気信号の流れ
(出典元:https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0047/G0000543/0003)
頻脈性:心室細動(VF) 緊急度★★★
心室が1分間に300回以上不規則に震える(=細動)ことです。言わば、心臓が痙攣しているイメージです。心臓の電気信号が狂っている状態でこの不整脈が出現した場合、たちまち死に繋がる非常に危険な不整脈です。
症状
突然の失神、顔色不良、呼吸・心停止へ
治療
除細動による電気ショック
*除細動が1分遅れるごとに7~10%ずつ生存率が低下する
VFの原因となる疾患の治療を優先する。治療が有効でない場合、治療をしてもなおVTのリスクがある場合は植え込み型除細動器(ICD)を挿入する。
余談
マラソン中に突然死したとかアイドルが原因不明の突然死などニュースで聞いたことがありますよね。恐らく、心室細動が起こっているケースが多いです。明確な死因はなぜVFを生じたかということになりますが、若い世代は健康診断で心電図検査があるわけでもなく、日常生活で兆候に気づかない場合も多いので突然死とを招きますが…おそらく、拡張型心筋症やブルガダ症候群などが隠れているのではないかと思われます。
頻脈性:心室頻拍(VT) 緊急度★★☆
心室期外収縮(PVC)が高頻度に出現し、心拍数が1分間に120回以上となり心室期外収縮が3回以上続くものを心室頻拍と言います。
心室頻拍は器質性と特発性の2種類あります。
器質性とはもともと心疾患がベースにありその疾患が原因となり不整脈を生じることです。
特発性とは突然、心疾患の既往がないにも関わらず生じることを指します。
頻拍持続時間が30秒以上続くものを持続性、30秒以下を非持続性と呼びます。心室頻拍の際のPVCの波形が1種類のものは単形成心室頻拍、PVCの波形が複数見られるものを多形性心室頻拍と言います。
特に多形性心室頻拍の方が電気信号の乱れが強く危険です。
長々と書いてきましたが心室頻拍と分かったら
このチャートに従い、超緊急の場合はVFに移行する可能性が高いのでとにかく時間との勝負です。
症状
急な動悸、息切れ、血圧低下症状(めまい、ふらつき、意識消失)
治療
- 薬物療法:β遮断薬
- カテーテルアブレーション:心筋梗塞の治療法であるCAGと同じ要領でカテーテルを心臓まで運び、高周波を流し、心筋の一部を60度で熱し、狂っている電気信号を戻すという治療法です。特に特発性心室頻拍で有効。
- 植え込み型除細動器(ICD):心室頻拍発生時に電気刺激または直流除細動により頻脈を停止させる体内に植込む機器。VTが頻発する人はICD挿入が命を守るためには必要です。
徐脈性:完全房室ブロック 緊急度★★★
心房の洞結節という心臓の発電所の役割の箇所で作られた電気が房室結節で途絶えてしまい心室に伝わらなくなる状態です。心房が動いてても、心臓の中心である心室が正しく動いていないのでそのまま心停止することや徐脈が続き心室細動(VF)を生じ、死に至る危険があります。
房室ブロックは重症度がⅠ~Ⅲまであります。
Ⅰ度房室ブロック:若い世代やスポーツ選手に見られる傾向。房室結節での信号はやや遅れることはあっても心室への信号が途絶えないので治療不要。
Ⅱ度房室ブロック:房室結節での電気信号が一部途絶え、心室の脈が打てないことがある。Wenckebach型とMobitz型ブロックが有名。
この図の通り、Mobitz型ブロックの場合はペースメーカー適応となり失神に要注意です!
Ⅲ度房室ブロック:完全房室ブロックと言い、房室結節での信号が完全に途絶えている。心室だけで脈を打ち、まれに心停止を逃れることもあるが非常に危険かつ早急な処置が必要な状態。
治療
ペースメーカー挿入のみ。
緊急時は体外式テンポラリーを挿入し、落ち着いてから植え込み式へ変更。
*脈を速くする特効薬は今のところなし
徐脈性:洞不全(SSS)症候群 緊急度★★★
心臓の電気信号のスタート地点である洞結節が働かず、脈が出なくなった状態。遅いながらも脈を打っていたのが突然電気信号が止まってしまい何秒も脈が打たない状態になることを洞停止と言い、意識消失の可能性が高まります。
治療
ペースメーカー挿入
アダムストークス症候群とは
心疾患の勉強をしているとこの名前を聞くことが多いはずです。
アダムストークス症候群とは心臓の不整脈が原因で生じる失神のことを指します。不整脈により脳への血流が乏しくなり失神を招きます。
これまで、致死的不整脈を説明する中で失神の可能性があると言いましたが正しくはアダムストークス発作を生じる可能性があるということです。徐脈で起こることがほとんどでしょう。
救急看護師の対応
救急外来
救命士さんが患者の状態に応じてAEDを作動したり、心臓マッサージをしていると思います。ROSCしているか心停止が続いているかという状況がほとんどですのでただちにモニタ-を装着し心電図波形と脈が触れるかどうかを確認しましょう。
救急部ICU
危険な状態を脱した後になりますが、心停止の時間が長ければ意識障害を生じている場合や心不全を合併している可能性があります。全身管理と不整脈の出現に注意が必要です。
救急病棟
体外式テンポラリーをつけて入院するケースがあるでしょう。設定を医師と確認し、テンポラリーが抜けることがないように固定をきちんとしましょう。
薬物治療が始まる可能性もあるので点滴・内服管理が必要です。不整脈出現時は12誘導心電図施行、血圧測定と脈拍蝕知、必要であれば除細動の準備をしましょう。
看護師の転職に興味がある人はこちらの記事へ。
コメント