ペースメーカーの基本~適応疾患やモードについて~

循環器

救急に関係なくペースメーカーについて苦手意識を持っている看護師は多いのではないでしょうか?循環器やICU,救急以外もペースメーカ―挿入中の患者を受け持つ機会はあるはずです。

心電図で電気信号を表すP派とQRS波に着目し、どんな疾患がペースメーカ―の適応になるか、またペースメーカ―がどんな役割を果たしているのか理解しましょう。

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ペースメーカーの基本的事項

ペースメーカーは心臓の電気信号を正常化することで心拍数や心臓の働きが調整され、心臓のポンプ機能を維持してくれる装置のことです。
心臓の調律をつかさどっており、生命に直結する医療機器となります。

ペースメーカーの適応疾患

  • 洞不全症候群
  • 完全房室ブロック
  • 徐脈性心房細動

の不整脈を認める場合、急死する可能性があるためペースメーカ―挿入の適応となります。

洞不全症候群(SSS)とは

心臓の電気信号のスタート地点である洞結節が働かず、脈が出なくなった状態。
遅いながらも脈を打っていたのが突然電気信号が止まってしまい何秒も脈が打たない状態になることを洞停止と言い、意識消失の可能性が高まります。
(心臓が原因で起こる意識消失をアダムストークス発作と言います)

完全房室ブロック(AVブロック)

心房の洞結節という心臓の発電所の役割の箇所で作られた電気が房室結節で途絶えてしまい心室に伝わらなくなる状態です。
心房が動いてても、心臓の中心である心室が正しく動いていないのでそのまま心停止することや徐脈が続き心室細動(VF)を生じ、死に至る危険があります。
房室ブロック重症度がⅠ~Ⅲまであります。

Ⅰ度は処置不要です

Ⅱ度房室ブロック:房室結節での電気信号が一部途絶え、心室の脈が打てないことがある。Wenckebach型とMobitz型ブロックがあり、Mobitz型はペースメーカー対象となります。

Ⅲ度房室ブロック:完全房室ブロックと言い、房室結節での信号が完全に途絶えている。
心室だけで脈を打ち、まれに心停止を逃れることもあるが非常に危険で早急な処置が必要な状態。

徐脈性心房細動

通常、心房細動では心房の脈は1分間に300-1000回にもなり頻脈が問題とされますが、心房の脈があまりに多くなると、房室結節と連絡することができなくなり、心室の脈が遅くなることがあります。
それを徐脈性心房細動と言います。
心房細動をベースに房室ブロックが合併した状態と考えると分かりやすいです。

倦怠感、息切れ、浮腫やめまい・ふらつきなど、症状が他の徐脈性不整脈と同様です。

ペースメーカーの構造と仕組み

本体とリードと呼ばれる導線でできた構造です。

リードは電気刺激を与えたい心房または心室、両方に挿入されます。
心臓から出た電気信号をペースメーカー本体が感知し、本体は心臓の興奮を感知する機能とペーシングというリズムを刻む機能を持ち合わせています。

上記のような疾患の場合、電気信号が適切に送られないことがあるので、ペースメーカー本体が補ってくれています。
正しい電気信号が来ない場合は本体が電気パルスを心臓へ送り、心臓の働きをサポートするのです。


大きさ:直径4~5㎝
厚さ:5㎜前後
形:楕円形

*リードの本数はペースメーカーの周囲によって異なります。

ペースメーカーの種類とモードの確認

ペースメーカーのモードは英語3文字で記します。これは国際基準です。

1文字目=刺激電極の位置・ペーシング部位(A:心房 V:心室 D:両方)
2文字目=感知電極の位置・センシング部位(A:心房 V:心室 D:両方)
3文字目=自己心拍を感知した際の応答(T:同期型 I:抑制型 D:両方)

心房:Atrium
心室:Ventricle
両方:Double
なし:None

補足ですが
ペーシング:人工的な電気刺激を送ること
センシング:心臓の興奮を感知する
という意味です。

英語表記だから苦手意識がある人が多いのですが基本的に心疾患の既往、ペーシング・センシング・応答の種類が把握できれいればペースメーカーのモードについては理解できます。

ちなみに、ペーシングやセンシングを心房・心室で考えてピンとこない場合は心房=P派、心室=QRS波と捉え、心電図波形を眺めならが考えるとペーシング位置とペースメーカーの働きが結びつきやすいです!

VVIモード


上の表から心室に対する抑制モードということが分かりますね!
心室に1本リードが入ります。
徐脈がまれに発生する方徐脈性房室ブロックの患者さんに適応されます。
心室でペーシングとセンシングをし、自分で電気的興奮があった場合はペースメーカー本体の人工的な電気刺激を抑制するというモードです。

房室ブロックでは、刺激も感知も心室。
さらに徐脈がまれということは自分の心臓で正常な電気興奮を送ることもあるので抑制モードということです。

AAIモード

上の表から心房に対する抑制モードということが分かりますね!
心房に1本リードが入ります。
洞不全症候群だが刺激伝導系に異常のない場合適応されます。
心房でペーシングとセンシングをし、自分で電気的興奮があった場合はペースメーカー本体の人工的な電気刺激を抑制するというモードです。
洞不全症候群はP派が検出されないのが特徴です。
そこで、心房でペーシングとセンシングをし、自分の心臓で正常な電気興奮を送ることができた時は抑制するというモードとなります。

VDDモード

心室に1本リードが入ります。
洞結節の機能が正常な房室ブロックの患者(P派があるがQRS派が脱落することがある)に適応されます。
心室でペーシングされ、心房(P派)・心室(QPS派)のどちらでも感知できます。
心室の自己心拍があれば抑制し、P派を感知したけどQRS派に繋がらない場合は、タイミングを遅らせて心室に電気興奮を送る同期という両方の機能を持つモードです。

DDDモード


心房と心室にそれぞれリードが入ります。
心房・心室ともにリードが入っているためDDDから他のモードへ切り替えることも可能です。
そのため全ての不整脈に対応できる設定となります。

心房・心室両方でペーシングもセンシングも行い、電気刺激がある時は抑制・電気刺激が正常でなければ同期するという両方のモードを持ち合わせています。

適応疾患としては洞不全症候群、完全房室ブロックが多いです。

進化しているペースメーカー

レート応答機能が掲載

洞不全症候群の場合、運動をしたときは心拍数が増加しないと循環血液量が維持できません。
以前のペースメーカーでは安静時も運動時も常に同じレートでペーシングをする機能しかなかったので運動時の心拍出量が不足するという問題がありました。

最近は身体の動きや体温の変化を感知して必要に応じて心拍数を変動させる機能が備わりました。
つまり洞結節の働きを補う機能です。

心拍応答機能(rate response)と呼ばれ、例えばDDDRというように4文字目に表記されます。

MRI対応可能が増えている

条件付きではありますがMRI対応のペースメーカーが増えてきています。
ペースメーカー本体とリードともに磁場の影響のない素材でできいます。
ペースメーカー手帳に必ず記載があるので、MRI検査を受ける前には確認が必要です。
また、検査前後で設定を変更する必要もあるので必ず医師へ相談の上、検査を受けて下さい。

脳疾患や脊椎疾患の場合、MRI検査でなければ詳細に分からないこともあり、MRI対応のペースメーカーは患者のQOLの向上に役立っています。

リードレスペースメーカーの可能性

通常、鎖骨下付近にペースメーカーの本体を埋め込み、心房・心室へリード線を挿入し作動させています。
しかし、日本メドトロニックで世界最小のカプセル型のペースメーカーが発売され、九州大学病院では臨床現場の使用が開始されているようです。

例えば、ポケット感染のため本体を鎖骨下に位置できない患者や静脈走行が複雑でリードの位置が難しい患者にとっては画期的なデバイスになるでしょう。

現在はVVIRしか発売されていないようですが、いずれは全てのモードに対応できる日が来るかも知れません。

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