救急現場でも肺炎で来院される方は非常に多く、寒くなると患者数が増える傾向にあります。
肺炎は術後の合併症にも多く、どの科の看護師も知っておかないといけない病気の1つです。
臨床現場で使える肺炎知識、紹介します。
肺炎とは
名前の通り肺の炎症疾患です。
世界的に見ても死因第10位以内に入る、侮れない病気であり、特に乳幼児や治療や加齢のため免疫力が低下している患者が罹患すると重症化することもあります。
また高齢者は感染ではなく誤嚥と言って、飲み込む機能が低下したことによっても肺炎を生じます。
原因による分類
細菌性 | 肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌など | 湿性咳嗽、痰黄色~緑色の痰、微熱、全身倦怠感、SpO2低下 |
ウイルス性 | インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなど | 一般的な風邪症状に続き、激しく持続する咳、呼吸困難感、急な高熱(38度以上は数日)、倦怠感など
重症化しやすい |
非定型(細菌とウイルスの間) | マイコプラズマ、クラミジアなど、細菌とウイルスの中間的な性質を持つ微生物が原因となる | 風邪症状、乾性咳嗽が長く続く、痰は多くない |
誤嚥性 | 加齢変化や疾患に伴う嚥下機能の低下 | 細菌性肺炎に類似した症状。ただし自覚症状のない場合もある。 |
このように原因によって大きく4つに分けられます。
【細菌性・誤嚥性肺炎】
頻度の高い疾患です。
細菌性肺炎の場合、重症化することも少なく適切な治療を受ければ後遺症なども残らないでしょう。
誤嚥性肺炎の怖いところは自覚が乏しいことです。食事中むせてなくても、誤嚥している可能性もあり、高齢になると注意が必要です。
細菌性・誤嚥性肺炎は入院中や術後の合併症として併発する可能性があります。
【ウイルス性肺炎】
症状が強く重症化する可能性も肺炎の中で1番怖い種類です。
【非定型肺炎】
最も有名なのはマイコプラズマ肺炎です。
特徴は風邪症状+乾性咳嗽の持続です。
一般的に肺炎は湿性咳嗽で粘稠度の高い痰を排出しますが、非定型肺炎のみ乾性咳嗽かつ痰は多くないです。
症状だけでは百日咳や咳喘息と判別が難しいこともあります。
感染場所による分類
市中肺炎 | 日常生活を送っている人が社会の中で病原微生物に感染し発症する。 | 早期治療で完治できる |
院内肺炎 | 入院している患者が48時間以内に発症する。原因微生物は様々で、呼吸器疾患の患者に関わらず免疫力が落ちている患者は罹患し重症化する可能性がある。 | 完治が難しく呼吸機能が急激に低下する可能性がある。(医療者の手を介して感染する可能性も高いため手洗いなどの予防行動は徹底している) |
一般的な肺炎は市中肺炎です。
市中肺炎は肺炎球菌やインフルエンザ菌が多いです。
院内肺炎では緑膿菌やクラブシエラが脅威です。
呼吸器管理をしている患者はより注意が必要ですが、どんな患者にも口腔内の清潔保持や痰喀出や体位ドレナージによる気道浄化を図り、医療者のスタンダードプリコーションの徹底で予防できます。
感染部位による分類
肺胞性肺炎 | 肺胞の炎症 | 高熱、湿性咳嗽とともに膿性の黄色や緑色(時には茶褐色)の痰分泌が多い |
間質性肺炎 | 「肺胞」を支える組織である「間質」が炎症を起こす肺炎 | 乾性咳嗽が持続し呼吸不全に至る |
たいていの肺炎は肺胞性肺炎であり治療によって膿性の痰を喀出すれば後遺症も残らず完治できます。
問題なのは間質性肺炎です。
救急部でよく出会う疾患ですのでぜひ知っておいてほしいです。
肺炎の症状
【軽症の場合】
微熱、咳嗽、排痰、軽度の呼吸困難感、倦怠感、胸痛
【重症の場合】
高熱、脱水、意識レベルの低下、安静時の呼吸困難感
上重症化する可能性があるウイルス性肺炎や院内肺炎の場合は敗血症や呼吸不全に至る可能性があり要注意です。
検査・診断
- 採血(炎症値)
- 動脈血ガス(pH、酸素・二酸化炭素分圧)
- 胸部レントゲン
- 胸部CT
治療
・抗生剤治療
一般的な肺炎の場合は
オーグメンチンSR375㎎(ペニシリン系)の内服加療となり自宅療養となります。
*ただし、慢性疾患のある患者や結核の可能性が否定できない場合など
ペニシリン系に加えてターゲットを絞った抗生剤を処方します
入院が必要な場合
ユナシン3g×3~4回 計9~12g
ゾシン4.5g×3~4回 計13.5~18g
セフトリアキソン1日1回
投与の場合が多いです。
腎機能やターゲットとする細菌によって多少変更はあります。
・酸素投与
SPO2が低下しているい場合は酸素を持続投与します。
・吸引
痰の喀出が自己で困難な患者の場合は吸引を施行し気道浄化を図ります。
痰が自己喀出できない場合、痰詰まりによる気道閉塞の可能性があるため要注意です。
・対症療法
去痰剤や咳止め、解熱剤など
症状の緩和につながる内服も処方されるでしょう。
救急看護の対応
【救急外来】
SpO2と心電図モニターを装着し、SPO2の低下や呼吸苦を訴える場合は酸素投与を開始します。採血、ルート確保の上、レントゲンやCT検査へ出棟します。
軽症の場合は内服もしくは数日間の点滴投与でこの対応で問題ありません。
搬送時から酸素化の低下やショック状態となっている場合は、挿管管理となる可能性があります。SPO2値と動脈血ガスの評価、本人の呼吸困難感に応じて挿管し、血圧低下に対して昇圧剤を投与します。
【救急部ICU】
人工呼吸器管理が必要になった重症例の患者が適応です。
呼吸管理とVAP予防を徹底し酸素改善に努めます。
全身状態が不良な場合も多いため心電図変化や循環動態の変動、INOUTバランスの管理も大切です。
吸引施行時に一時的にでも人工呼吸器が外れ、痰が気管分岐部など細い箇所に詰まって急激に酸素が悪化することもあるので注意です。
【救急病棟】
抗生剤治療が必要な患者が適応となります。
たいていの場合は抗生剤治療によって経過が良好になることが多いですが、中には抗生剤があたっていないこともあるため採血の炎症値の推移やSPO2の変化に注意が必要です。
また痰詰まりにより急激に呼吸状態が悪化する可能性もあるためこまめに吸引の介助が必要になるでしょう。
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