抗血小板剤と抗凝固剤の違い、理解できていますか?
名前の通り、血液をサラサラにするんでしょ!ってイメージして、違いを理解していない看護師が意外に多いです。
高齢者は服用している人が多いから、きちんと理解してないと、まずいいですよ
キーワードは動脈・静脈どちらに関連しているかということです。
・止血の仕組み
・動脈、静脈の特徴
の2点をしっかり理解していると、自然に抗血小板剤と抗凝固剤の違いが分かります。
抗血小板剤と抗凝固剤の違い
一目瞭然ですが、動脈疾患の治療には抗血小板剤、静脈疾患の治療には抗凝固剤を使います。
止血をの仕組み:一次止血と二次止血を理解しよう
一次止血では、血管の傷ついた部分に血小板が集まり、塊を作ります。
この塊で損傷部を埋めて止血する方法です。
二次止血では、この塊をより強固なものにしてさらに止血効果を高めようとします。
血液中の凝固因子が互いに反応し、最終的にはフィブリンという糊状に成分になり、血栓を絡めて止血効果を高めます。
つまり、一次止血では血小板、二次止血では抗凝固の働きが必要です。
動脈血栓の原因は血管の損傷
加齢や生活習慣病により、動脈硬化が進んでいきます。
血管は内皮組織で覆われており、通常血栓ができないような構造になっています。
しかし、動脈硬化が進むと、血管壁にコレステロールなどが引っ掛かり、弾力も損なわれます。
その結果、粥状に変化し、血管の内宮を狭くし、動脈硬化の部分が破れやすく内皮を損傷し、血管損傷を招きます。
この損傷部に一次止血の機能が働きます。
つまり、血小板が集まり塊を作り、血液循環が悪くなると血栓症を起こすわけです。
動脈の内皮にできた血栓が剥がれて血流に乗り、血管を詰まらせることを塞栓症と呼び、動脈で起こります。
動脈は血管の損傷が原因です。
なので、以下の疾患では、抗血小板剤の内服をするのです。
・狭心症
・心筋梗塞
・脳梗塞
静脈血栓の原因は血液のうっ滞
動脈と比較すると静脈は血圧が低く、血流も遅いため血液が滞りやすという特徴があります。
滞るというのは血液中の凝固因子が活性化された状態のことです。
深部静脈血栓症をイメージすると分かりやすいですが、長時間の安静臥床によりDVTになるのは下肢の血流が悪いため、つまり静脈のうっ滞の状態です。
つまり、静脈は、血液のうっ滞により血栓ができやすくなります。
静脈でできた血栓が血流によって肺や脳へ到達すると肺塞栓症・脳梗塞を招きます。
心房細動でも同様です。
細動と言って細かく動いている状態で心臓のポンプ機能は弱く血液循環量は少なくなっています。
その結果、血液の流れが悪くなり血栓のリスクが高まり、心臓から脳へ飛んで心原性脳梗塞を招くのです。
静脈はうっ滞が原因。
つまり、以下の疾患は抗凝固剤を内服するのです。
・深部静脈血栓症
・肺塞栓症
・心原性脳塞栓症
・人工弁置換術
・心房細動
抗血小板剤の絶対知ってほしい基本知識
疾患による抗血小板剤と抗凝固剤の使い分けは理解できたと思います。
次は、抗血小板剤の種類や特徴を理解しましょう。
抗血小板剤の種類と特徴
抗血小板剤は経口薬しかありません。
それぞれの薬で作用機序が異なるので組み合わせて使うことで強力な抗血小板療法を可能にします。
効果消失期間というのは、薬を中止してから効果がなくなるまでに必要な日数です。
シロスタゾールは短期間で効果を発揮し短期間で効果を消失するという特徴があります。
抗血小板剤を内服するときの注意点
効果消失期間がなぜ重要になるかと言えば、手術や処置など出血を伴う場合、手術の日程に合わせて内服を中断する必要があるからです。
あくまでの上の表の日数は目安ですが、一般的に1週間前から内服を中止する指示が出ます。
その間も血栓症のリスクが高い人には抗血小板剤の代わりに抗凝固薬に切り替えて投与を持続する場合があります。
(抗凝固薬のヘパリンは半減期が12時間と短いため手術前日まで投与可能です)
抗血小板剤の副作用
言うまでもなく頻度の高い副作用は出血です。
皮内出血、鼻出血、歯肉出血、月経過多、血痰、血尿、血便、貧血などの可能性があります。
一度出血すると、止血までに時間を要するのでまずは出血しない生活を送ることです。
より注意したいのが消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血です。
転倒して軽く頭を打ってその時はなんともなかったけど、じわじわと出血が持続し数ケ月経ってから神経症状が現れるということもよくあります。
抗血小板剤を内服している患者さんは、止血に時間がかかるので、何より出血しないことが重要です!
抗血小板剤:アスピリンの副作用
アスピリン喘息や胃潰瘍などの消化管潰瘍のリスクが上がります。
もともと喘息や潰瘍の既往がある人はより注意が必要です。
抗血小板剤:クロピドグレル・チクロピジンの副作用
特にクロピジンでは
・血栓性血小板減少性紫斑病(発熱、貧血、血小板の減少、精神症状、腎機能の低下などの症状)
・無顆粒球症(易感染状態)
・肝障害
主に投与開始後2か月以内に起こる可能性があります。
投与開始2か月は原則として2週間に1回血液検査を実施し早期発見に努めます。
抗血小板剤:シロスタゾールの副作用
血管拡張作用があるので、頭痛や動機、狭心症の発作を生じる可能性があります。
抗血小板剤を内服している人の禁止食品
グレープフルーツ
特にシロスタゾールでは絶対禁忌です。
グレープフルーツを飲むとこの薬の血中濃度が上昇し、副作用のリスクが高まります。
抗凝固薬の絶対知ってほしい基本知識
抗凝固剤は急性期、慢性期とステージによって使い方が違います。
また、抗血小板剤とは違う注意事項があります。
抗凝固薬は3種類:急性期と慢性期で使い分け
急性期治療では点滴投与が優先され、安定すると内服に切り替えます。
皮下注射薬は急性期・慢性期という分け方ではなく、整形外科の術後患者など床上安静が長くなり深部静脈血栓症のリスクが高い人が使用することが多いです。
抗凝固薬を内服している人は定期検査が必要
ワーファリンはビタミンKの働きを抑え、血液の凝固機能を低下させます。
つまり、凝固因子を直接抑えるわけではないので、服用後、効果が安定するまで一定期間を要します。
その間、血液検査のPT(プロトロンビン時間)やINR(国際標準化プロトロンビン時間)の値を確認し、内服量を調整します。
病態にもよりますが一般的にはINR1.6~3.0で調整することが多いです。
抗凝固薬を内服するときの注意点
妊娠中の場合
妊娠6~9週に内服すると胎児の奇形のリスクが上がるため、もし妊婦さんで抗凝固薬を内服している場合はヘパリン注射に切り替えるなど対応が必要です。
抗凝固機能が効きすぎて出血リスクが高まっている場合
緊急手術・処置の場合で出血リスクが高いときや単にINRが延長し過ぎている場合はワーファリンの作用を抑える必要があります。
その場合、ビタミンKを投与し凝固機能を回復させます。
臨床では「ケイツーフラッシュして」と言われると看護師がビタミンKを準備しますよー
ヘパリン特有の副作用
体内にヘパリンと血小板第四因子の物質に対し抗体ができ血小板数が減少する副作用「ヘパリン起因性血小板減少症」というのがあります。
通常は血小板が減少すると出血リスクが上がるのですがこの場合は逆の作用が働き、血栓症を起こしやすくさせます。
対処方法はヘパリン以外の薬に変更することです。
抗凝固薬を内服している人は薬の飲み合わせに注意
ワーファリンの作用を強める可能性があるもの:抗生剤、解熱鎮痛剤
ワーファリンの作用を弱める可能性があるもの:骨粗鬆症治療薬、抗てんかん薬
必ず、飲み合わせを確認しましょう。
抗凝固薬を内服している人の禁止食品
- 納豆
- クロレラ
- 青汁
- モロヘイヤ
には大量のビタミンKが含まれているので、抗凝固機能を抑制させる働きがあります。
また、一度に大量の緑黄色野菜を摂取すると、ビタミンKの過剰摂取になる可能性があるので分けて摂取しましょう。
抗血小板剤と抗凝固薬の違いまとめ
抗血小板剤と抗凝固剤の違い、理解できましたか?
最低限の知識の確認です。
・動脈性疾患
・薬の効果が長い
・グレープフルーツはダメ
・静脈性疾患
・薬の効果が短い
・納豆、青汁はダメ
入院患者の基礎情報の入力の際、抗血小板剤・抗凝固剤の内服をしている場合、禁忌食品にグレープフルーツとか納豆とか入力することを忘れずに!