貧血と聞いて1番に思い浮かべるのが鉄分不足で女性に多いイメージがあると思いますが、実は貧血は4種類
鉄欠乏性貧血・再生不良性貧血・巨赤芽球性貧血・溶血性貧血
です。
貧血とは血液の成分が少なくなっている状態
貧血とは簡単に言うと、血液量ではなく、血液成分が不足し全身へ十分な酸素を運ぶことができなくなります。
この血液成分というのは赤血球やヘモグロビンを指します。
赤血球:全身に酸素を運ぶ
ヘモグロビン:赤色のたんぱく質。赤血球が酸素を運ぶときに必要
多くの人が勘違いをしていますが、貧血は血液の量が減少しているわけではなく、ヘモグロビンや赤血球が少なくなり、血液の濃度が薄まっている状態です。
原因別に貧血を分類すると4種類ある
そもそも赤血球やへモブロビンを作る能力が低下している、出血により赤血球やヘモグロビンが失われる、赤血球やヘモグロビンは作るよりも壊れる速度の方が速い、血液成分が減って濃度が薄まっている状態の4種類です。
どの貧血にも共通する症状
- めまいや頭痛
- 息切れ
- 疲れやすくなる
- 味覚がおかしくなる
- 顔色不良(青白くなる)
- 胸痛
など、様々ですが、共通しているので貧血による酸素の供給不足ということです。
酸素不足を解消しようと各臓器は頑張って活動的になります。
その結果、呼吸が早くなって息切れをしたり、心拍数が上がり胸が苦しくなることがあります。
また、貧血と聞いて1番思い浮かべるのが顔色が悪い事だと思いますが、酸素が十分にないので脳や心臓など重要臓器へ優先的に酸素が運ばれて皮膚まで十分な量が到達しないため、顔色が悪くなります。
貧血を判定するための血液検査項目と基準値
この基準値を下回ると、貧血の可能性があります。
上では原因別に貧血を分類しましたが、医学的に分類されている4種類の貧血について説明していきます。
貧血の種類①女性に多い鉄欠乏性貧血
貧血の約9割を占めます。さらに、日本人女性の約半数が鉄不足であり、約20%は鉄欠乏性貧血の状態らしいです。
なぜ鉄分が不足すると貧血になるかと言うと、
血液成分であるヘモグロビンを体内で作るのに鉄が必要なので、鉄分不足になるとヘモグロビンの生成量が減ります。
というメカニズムです。
なぜ、女性の方が鉄欠乏性貧血になりやすいのか?
- ダイエットによる栄養不足
- 妊娠・授乳による鉄の必要量の増加
- 月経により毎月出血している
特徴的な症状
- 爪が割れる
- 唇や舌が荒れる、炎症する
- 固形物が飲み込みにくい
- 髪が抜けやすくなる
- 肌の乾燥
- 氷や土を食べたがる
など。
最後に挙げた氷や土を食べたがるというのは特徴的です。
さすがに土を食べている人も見たことはないのですが、思春期~若い世代の女性で氷をガリガリと食べている人はいますよね。
もしかしたら、鉄欠乏性貧血かも知れません!
鉄欠乏性貧血の治療で重要なことは鉄分の補給
鉄分の多い食事の紹介
まずは鉄を多く含む食材を摂取することが大切です。
食事で補える鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類ありますが、同時に接種することで腸への吸収率がアップします。
鉄剤・サプリメントで補給
食事だけで改善しない場合や妊娠中や授乳など多くの血液が必要となる時期では食事と併用して鉄剤を内服して補給します。
私は飲んだことないのですが…母曰く、血の匂いがして非常に飲みにくいと。
鉄剤は特に飲みづらいのかも知れないですね。毎日続けるならサプリメントの方が良いかも!
意外!たんぱく質補給
最近、鉄剤を内服しても貧血が改善されない人が増えているそうです。
特徴は鉄不足だけでなく、総蛋白やアルブミンという栄養状態の指標となる血液データの値の低下が挙げられています。つまり低栄養状態ということです。
鉄欠乏性貧血の原因で最も多い月経では、鉄だけでなくたんぱく質も失っているのです。(ヘモグロビンは蛋白と鉄が結合されたものなので)
さらに、主食の変化も原因の1つと考えられています。
若い世代の女性は米→小麦主体の食生活へ変化しています。お米は必須アミノ酸が全て揃うのですが、麺類やパンは必須アミノ酸が2種類不足します。
また、時間がないからとパスタだけと1品メニューで済ませることやダイエットのためサラダしか食べないなど良質なたんぱく質を摂取できていない人が増えています。
鉄分に加え、意識してたんぱく質(肉・魚)を摂取することで鉄欠乏性貧血の改善に繋がります。
貧血の種類②再生不良性貧血
血液は骨髄である造血幹細胞というのが元となり作られています。
再生不良性貧血では骨髄の機能が低下し、造血幹細胞に障害が起こり、血液を産生することができなくなっている状態です。
つまり、赤血球だけでなく白血球や血小板など血液成分の全てが生成されにくくなり、貧血以外の症状も伴う難病指定の病気です。
再生不良性貧血の原因
先天性の場合、ファン͡コニ貧血と言われ、発症頻度はごくまれです。
大半は後天性であり、10%は薬剤や放射線によるもので、残りの90%は続発性ではっきり原因が分かりませんが恐らく自己免疫疾患だろうと言われています。
特徴的な症状
- 感染症
- 出血傾向
(皮膚にできる点状出血やあざ、鼻血、歯肉出血。もっと重症になると脳出血や下血、血尿のリスクあり)
赤血球の不足だけなら上で述べた貧血症状だけですが、白血球の減少により、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、血小板が不足すると出血した時に血が固まるのに時間を要します。
再生不良性貧血は重症な血液疾患の1つです。
再生不良性貧血の3種類の治療
免疫抑制剤の投与
造血間細胞を傷害しているリンパ球の増殖を抑え、造血機能を回復させる治療法です。
この治療法がベースとなります。
(リンパ球とは本来自分の身体を守ってくれるのですが、この疾患では自分自身を攻撃しているのです)
骨髄移植
目安として40歳以下の若い世代が対象になりますが、HLAという白血球の型があった人の骨髄細胞を移植し、正常な造血幹細胞をもらうという方法です。
これは根本的治療で、5年生存率90%と高く、1番有効なの治療法と言えます。
輸血投与
常に貧血の状態なので定期的に外来を受診し輸血により血液を補う対症療法です。
これは完治に向けての治療ではなく、本人の苦痛や症状を緩和させるための治療なので対症療法になります。
貧血の種類③巨赤芽球性貧血
ビタミンB12や葉酸の不足により赤血球を作る骨髄で造血機能が上手く働かなくなります。
名前の通り、赤血球の形がいびつになったり大きくなったりして起こる貧血です。
巨赤芽球性貧血の原因
ビタミンB12の欠乏は胃癌のため胃を切除した方がなりやすいです。
理由はビタミンB12の吸収に胃液が必要ですが、胃を切除された方は胃液の量も減ってしまうからです。手術をして5年経過すると体内で貯蔵していたビタミンB12を使い切ってしまい、貧血を発症しやすくなります。
一部では骨髄異形成症候群のような自己免疫疾患が原因で起こることもあります。(赤血球は骨髄で作られています)
葉酸不足は、ビタミンB12不足より頻度は低く、普通に生活をしている人はまず起こりません。
発症する可能性ある人は妊娠やアルコール依存症、セリアック病、メトトレキサートなどの薬剤の内服をしている人です。
特徴的な症状
- 味覚の変化
- 食欲低下
- 体重減少
- 白髪は増える
- 舌の炎症
- 性格の変化
- 思考力の低下
- 亜急性連合性脊髄変性症と呼ばれる神経疾患
症状は様々で、貧血以外でも起こり得る症状なので気づきにくいと思います。
神経疾患を発症した場合、手足が痺れ、重症になると歩行困難に陥ることもあるので注意が必要です。
巨赤芽球性貧血の治療で重要なことは不足成分の補給
注射や内服による補充療法
自己免疫性でない場合は、不足しているビタミンB12か葉酸を注射で補うことで症状を回復させることができます。
ビタミンB12の欠乏は食生活ではなく胃液分泌の減少による吸収障害がほとんどです。このような方も補充療法をすることで、貧血を防ぐことができるのでご安心下さい。
食事療法
主に葉酸不足の人は補充療法に加え、食事の見直しで改善することができます。葉酸を多く含む食材はほうれん草などの葉物野菜、果物、レバーです。
妊婦さんは普段より多めにこれらの食材を摂取してみると良いでしょう!
ビタミンB12を注射で補うと、患者さんは数時間で身体の活力の回復を自覚し、貧血、食欲低下、体重減少も数か月で回復します。
また、胃から分泌される内因子が欠乏している場合、筋肉注射でビタミンB12を補充し治療することが可能です。
貧血の種類④溶血性貧血
赤血球の破壊により起こる貧血で、赤血球を作る機能は正常に働らいています。
赤血球の寿命は約120日ですが、寿命まで赤血球が保てず、新しい赤血球が作られるよりも前に血液の中に溶けてしまい、赤血球の成分が減り貧血になります。
溶血性貧血の原因
10%の人は遺伝性球状赤血球症という、先天性の病気が原因です。
残りの90%は後天性で、約半数が自己免疫性溶血性貧血と言われ、難病に指定されており、自分の赤血球を異物とみなし、攻撃してしまう免疫異常の病気になります。
また、マラソン選手など激しいスポーツが原因になっていることもあります。
特徴的な症状
- コーラのような褐色の尿
- 黄疸
- 胆嚢結石
- 脾臓が大きく腫れる
壊れた赤血球のヘモグロビンが、体内で大量に処置されるときに間接ビリルビンという尿素が増加します。その結果、ビリルビンが尿中で排泄されるので褐色尿になったり、体内に貯留してきたビリルビンの影響で皮膚や眼が黄色くなります。
また溶血が慢性化すると、このビリルビンが胆嚢に溜まるので胆嚢結石になりやすくなります。
脾臓の拡大・腫脹は先天性疾患の人に見られます。
溶血性貧血の3種類の治療
ステロイド治療
第一選択で初期寛解療法と呼ばれています。
特発性の8~9割の人はステロイド治療で貧血の改善を認めます。
自己免疫機能を抑える役割があり、赤血球の破壊を食い止める効果があります。
脾臓摘出
先天性の人が対象となやすいです。
脾臓は乳幼児期は赤血球や白血球など血液成分を作る工場であり、大人になると古くなった血球を処分したり蓄える場所になります。
溶血性貧血の原因である赤血球の破壊は脾臓でされるため、脾臓を摘出することで赤血球を寿命まで維持することができやすくなり、貧血の改善に繋がります。
脾臓がなくなっても、血球の処分や蓄える役割は肝臓や骨髄が代わりに果たしてくれるので身体には問題ありません。
免疫抑制剤の内服治療
ステロイド治療で効果は得られなかった人が対象になります。
名前の通りで自己免疫を抑える薬になります。免疫機能をあえて低下させる状態になるので感染症には注意が必要です。
鉄欠乏性・再生不良性・巨赤芽球性・溶血性貧血のまとめ
- 女性に多い鉄欠乏性貧血は特に妊娠後期~授乳中に注意
- 鉄分は肉や魚などのヘム鉄と緑黄色野菜や豆類の非ヘム鉄と一緒に接種すると吸収されやすい
- ヘム鉄はたんぱく質補給にもなり栄養状態の改善に効果的
- 再生不良性貧血は難病指定の病気で免疫力低下による感染症や出血リスクに注意が必要
- 巨赤芽球性貧血はビタミンB12 や葉酸不足が原因
- 溶血性貧血で多いのは自己免疫疾患であり難病指定の病気である。ステロイド治療が有効で治療成績も良い
- マラソン選手など激しいスポーツをしている人も溶血性貧血になりやすい
貧血と言っても種類も多く症状も様々で、侮れませんよ!