下血が主訴|下部消化管出血の原因疾患と看護

下血・血便を主訴に救急外来を受診される方も大変多いので、救急部では絶対に必要な知識です。

まとめて下部消化管出血と言いますが、下血・血便を招く疾患とその治療について解説していきます。

下部消化管出血の主な原因疾患

  • 憩室出血
  • 虚血性腸疾患
  • 痔核
  • 大腸がん・ポリープ
  • 炎症性腸疾患
  • 感染性大腸炎

が下血をもたらす下部消化管出血に多い疾患です。

憩室出血が半数を占めます。さらに、下部消化管出血の中でも重症例が多いのがこの憩室出血で、重症例の約60%を占めています。

炎症性疾患というのは潰瘍性大腸炎やクローン病のことを指します。

下部消化管出血の原因疾患は、上部消化管出血で説明した、胃・食道静脈瘤破裂のような大量出血に至ることは少ないです。
どちらかと言えば、じわじわ出血し少しずつ血便を認め、次第に1回量が多くなるという経過をたどります。

中でも救急部で高頻度で遭遇する、憩室出血、炎症性疾患、虚血性腸炎、感染性大腸炎について説明していきます。

高頻度で起こる憩室出血とは

大腸壁の筋層が欠損した部位から粘膜および粘膜下層が嚢状に突出した状態を憩室と言い、この嚢状のところから出血することを憩室出血と言います。

憩室出血の主な原因と特徴

【原因】

・食物繊維の摂取不足
・便秘による腸の内圧亢進

【特徴】

・症状は腹痛と下血
・右側結腸に認めることが多かったが、近年S状結腸憩室も増加している
・大腸憩室は多発することが多く、炎症・出血・狭窄などの原因となる
・高齢者で解熱鎮痛薬や抗血栓症薬を投与されている人は要注意

憩室出血の検査と治療

検査と治療を兼ねて大腸カメラや造影検査を実施します。

【内視鏡のクリップ法】

大腸内視鏡で出血している憩室を発見できた場合にはクリップで機械的に挟んで止血するクリップ法が有効かつ安全な治療です。

【コイル塞栓術】

大量出血によりショックバイタルの状態では、動脈性の出血が考えられるので、腹部血管造影で出血点を探し、コイル塞栓を行い、止血を試みます。

【外科的切除】

コイル塞栓術ができない、出血点が複数あるなど重症かつ緊急を要する場合は輸血とともに出血腸管を切除する緊急手術を施行します。

止血も再出血もしやすい

実は、内視鏡を実施しても、どの憩室から出血をしているかを判定することは難しいです。なぜなら、憩室出血の75%が自然止血するため、カメラで検査をしているときに憩室を見つけることはできても出血点かの判断が難しいためです。
止血もしやすい一方で、4割の人が再出血し、その後も繰り返し下血を繰り返す可能性があります。

潰瘍性大腸炎(UC)とは

粘膜にびらんや潰瘍を形成する大腸のびまん性非特異性炎症疾患であり、
原因不明で難病指定されてる疾患です。

潰瘍性大腸炎の症状

【消化器症状】

腹痛・血便・粘血便・下痢(血性の場合もある)
病変範囲と重症度によって症状は異なるが、重症化すれば水様性の下痢+下血浸出液+粘液のような性状へ変化する。

【全身症状】

発熱、食欲不振、体重減少、貧血
関節炎、虹彩炎、膵炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症など

潰瘍性大腸炎の特徴

・30歳以下の成人に多い
・直腸から口側へ炎症が広がる
・再燃と寛解を繰り返す
・手術により大腸切除の領域が広くなれば癌化や死亡率が高まる

潰瘍性大腸炎の治療と合併症予防

薬物療法

治療の第一選択はステロイドと抗炎症薬の投与になります。ステロイドは患者の状態や採血データや副作用・合併症など複合的に判断しながら、投与期間や量を決めていきます。
潰瘍性大腸炎の抗炎症薬の代表は5-ASA製薬(メサラジン)です。

中等度~重度の潰瘍性大腸炎の場合、ステロイド薬無効の症例があります。

その場合は
血球成分除去療法や免疫抑制剤(シクロスポリン点滴静注・タクロリムスの経口投与・インフリキシマブの点滴静注・アダリムマブの皮下注射・ゴリムマブの皮下注射)など

合併症予防の治療

潰瘍性大腸炎の患者は飲食の摂取が減り、下痢でかなりの栄養や水分を喪失しているため、脱水、電解質異常(特に低カリウム血症)、貧血、低蛋白血症、栄養障害を合併していることが多い。

脱水:点滴で水分補給
低カリウム:K補正
貧血:輸血を検討
食事:高カロリー・低脂肪・低残渣・低刺激の食事を推奨する

外科的切除

薬物療法で改善しない、症状の増悪が見られる場合、腸切除術を施行します。
潰瘍性大腸炎は直腸から上方性に病変が広がる特徴があるが、近年手術が進歩し、肛門を温存できる症例が増えています。

クローン病とは

消化管のどの部位でも起こり得る、潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変です。原因不明で難病指定されています。

潰瘍性大腸炎は大腸にできる炎症疾患、クローン病は全ての消化器で起こり得る炎症疾患という違いが口腔~肛門まで非連続性に病変ができるという特徴があります。

クローン病の症状と怖い腸管合併症

【消化器症状】

主に腹痛、下痢、体重減少、発熱、肛門病変

【全身の症状】
貧血、肝障害、末梢関節痛、強直性脊椎炎、口内炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、虹彩炎など

【腸管合併症】

クローン病は浅い粘膜から炎症が始まり、深い粘膜へと進行します。
腸管壁の深くまで炎症が及ぶと、腸管合併症を引き起こします。

腸管合併症とは狭窄、穿孔、瘻孔、膿腫、出血、癌などのことです。

クローン病の検査と治療

寛解導入法

栄養療法+薬物療法の組み合わせです。完治を目指すのではなく、状態の安定化を目標とする治療法になります。

潰瘍性大腸炎と同様、栄養状態が崩れやすいため治療の1つとして考えられ、高カロリー・低脂肪・低残渣・低刺激の食事を推奨しています。

軽症の場合は、抗炎症薬の5-ASA製薬(メサラジン)を使います。これは、潰瘍性大腸炎でも使用される薬剤です。
中等度以上では、副腎皮質ステロイドを投与します。

ステロイドの効果がない&重症例では
免疫抑制剤として抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードまたはヒュミラ)や抗生剤(メトロニダゾール、シプロキサン)投与や血球成分除去療法が適応となります。

外科的治療

絶対適応:腸閉塞、腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸省、癌の併発
状況に応じて適応:狭窄が強い、膿瘍、内瘻、外瘻

絶対適応はクローン病で上記の状態を併発している場合は、手術が第一の治療となります。
また、内科治療を行っても効果を示さない場合は、炎症や潰瘍ができている箇所を切除する手術となりますが、難病指定の疾患であり完治することは難しく再発を繰り返す方も多いので複数回手術を受ける場合もあります。

虚血性腸炎とは

大腸の末梢血管の血流が乏しくなり、びらんや潰瘍、壊死を起こす疾患です。

虚血性腸炎の原因と特徴

【原因】

・高血圧、糖尿病、高脂血症などによる動脈硬化症
・便秘
・腸蠕動音亢進

【特徴】

・症状は下腹部痛、鮮血便や鮮血が混じった下痢が突然起こる
・高齢者に多いが、若い世代でも起こり得る

虚血性腸炎の検査と治療

検査:大腸カメラ

大腸内視鏡を施行し、粘膜の発赤、浮腫、出血、さらには多発性のびらん、潰瘍等が見つかれば、虚血性大腸炎の可能性が高いです。
鑑別疾患として、潰瘍性大腸炎、感染性腸炎、薬剤性腸炎も挙げられ病歴聴取により診断します。

保存治療

絶飲食と点滴による保存治療が一般的です。
症状は1~2週間で消失し、段階ごとに食上げし、退院となります。

狭窄が強い虚血性腸炎の場合は、保存治療では改善せず、腸切除術が必要になることもあります。

感染性腸炎は季節によって原因が異なる

細菌、ウイルス、寄生虫が大腸に感染し、炎症を引き起こす疾患です。
夏は細菌性、冬はウイルス性が流行しやすいです。

患者数の多い感染性腸炎は

  • ノロウイルス
  • カンピロバクター
  • サルモネラ
  • O-157

です。

実は夏の細菌感染による感染性腸炎の方が重症化しやすい特徴があります。

救急看護の実際

救急外来

下血だと救急車よりも自力で来院されることが多いです。
バイタルサイン、採血、問診をします。

下血の原因疾患のどれに該当するか診断し、貧血が進行している場合は輸血、憩室出血が疑われる場合は大腸カメラを行います。腸炎の場合は外来でする緊急の処置はなく、早速入院管理となります。

大量の下血でショックバイタルで搬送された場合は、まずは循環動態を安定させるため、大量補液、輸血を開始します。

ショックになっているときは、動脈性の出血の可能性が高いのでアンギオへ出棟することが多いでしょう。
バイタルは不安定でも下血が続いていない場合は大腸カメラを行うこともあります。

救急部ICU

ショックバイタルで動脈塞栓をした患者ないしは、緊急手術後の患者が入院適応になると思います。

コイル塞栓が完全にできれば再出血の可能性は高くはないですが、全身状態が不安定なのでINOUT管理が大切です。特に、初療室で循環を維持させるために大量の点滴・輸血を施行しており、水分と電解質バランスが崩れている可能性が高いので心不全・腎不全には注意が必要です。

術後の管理は、プロトコールに従うのみですが術後合併症に注意し観察します。

救急病棟

下血の患者の入院は頻度が高いです。

大腸カメラ後に入院した場合は、下血、バイタルサインと貧血データと合わせて観察していきます。

【観察項目】

・下血の有無、量、性状
・消化器症状
・Hb,Ht
・WBC,CRP

数日後2nd-lookをするかも確認して下さい!

腸内に残った血液がじわじわと続くのは問題ないですが、経時的に量が減らないのは問題なので、止血が出来ていない可能性があります。

そして1番注意してほしいのは、貧血のためふらつき転倒する可能性やトイレで大量に下血をして迷走神経反射を起こし、倒れる可能性があることです。

検査後、数回のトイレは付き添いをするのが安全です。

大腸カメラなしで入院した場合は、下血が続く可能性が十分にあるので貧血の進行に注意しましょう。

食事開始後に再出血を認める可能性があるので食上げ期間は症状の悪化に注意して下さい。

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